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東京地方裁判所 昭和33年(ワ)5779号 判決 1959年6月06日

原告 吉本元義

被告 吉長六郎

主文

被告は原告に対し金十四万八千円及びこれに対する昭和三十三年六月一日から完済に至るまで年一割八分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は主文第一、二項と同旨の判決ならびに仮執行の宣言を求め、請求原因として、原告は昭和三十二年四月二十五日弁論分離前の相被告辻万兵衛に対し金十八万一千五百円を弁済期昭和三十二年七月二十四日、利息一ケ月七分、利息支払方法毎月末日当月分を持参払の約束で貸渡した。被告は右債務の保証をした。原告は昭和三十三年一月三十一日までに被告から元金の内入として金三万一千五百円及び利息の弁済を受けたが、その後被告及び辻万兵衛は債務の履行を遅滞していた。原告代理人は昭和三十三年五月中被告と交渉の結果被告との間に被告は保証債務の履行として昭和三十三年五月から毎月末日限り一ケ月に付三分の割合に減額した損害金を含む月額二万円づつを完済に至るまで原告代理人の事務所に持参して支払うことという約束ができた。しかるに被告は昭和三十三年六月四日第一回分二万円を持参して支払つた。原告は約定により内金一万八千円を昭和三十三年二月一日から同年五月三十一日まで月三分の割合による損害金に充当し、残額金二千円を元本に充当した。その後被告は弁済しないので原告は昭和三十三年七月十五日被告に対し第二回分(六月分)金二万円を同年七月二十日までに支払わないときは割賦弁済契約はこれを解除する旨の意思表示を発し、右意思表示同年七月十六日被告に到達したが、被告は催告期限までに履行しなかつたので、原告と被告間の前記債務弁済契約は同日解除された。よつて、原告は被告に対し元本残額十四万八千円及びこれに対する昭和三十三年六月一日から支払済まで約定利率のうち利息制限法の範囲内における年一割八分の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴請求に及んだと述べた。

被告訴訟代理人は、原告の請求を棄却する、との判決を求め、原告主張事実を全部認める、と答えた。

理由

原告が請求原因として主張する事実は当事者間に争いがない、原告は被告の債務不履行を理由として分割弁済契約を解除したと主張するが、原被告間の分割弁済契約は、損害金を一ケ月三分とし、これを超える部分を免除した外は被告に期限の利益を与えたにすぎないものと解すべきであるところ、特約のない限り、債務者か期限の利益を失うのは民法第百三十七条に定める場合に限るものと解すべきであつて、債権者は一旦与えた期限の利益、例えば割賦弁済の利益を先に期限の到来した割賦金債務の不履行を理由として、後に期限の到来する割賦弁済の利益を失わせることはできないといわなければならない。従つて原告の分割弁済契約の解除は効力を生じないが分割弁済契約によつても本件口頭弁論終結当時までに残元本全額について弁済期が到来していることは計数上明らかである。してみると被告は原告に対し残元本十四万八千円及びこれに対する昭和三十三年六月一日から右完済まで約定利率のうち利息制限法の範囲内である年一割八分の割合による損害金を支払う義務があることは明らかであり、右義務の履行を求める原告の本訴請求は正当であるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を各適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡松行雄)

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